「ざれごと寝言大事なこと」日記#6

西山香葉子という同人者の本性がわかる? ぺーじです。

慶応・明治・大正・昭和の年代記から見えてくるもの

長い章題ですが。

松平三代の女 (角川文庫)

松平三代の女 (角川文庫)

ずいぶん前に、「読んでムカつかされた」という本として書いていたのがこの本だったりする。どこで書いたか確認とってる暇がないので後で発見したらその記事にリンクね。多分「読書」とジェンダー系のカテゴリだとは思う。

尾張藩の家臣の一家という身分を背負った者たちのそれぞれの人生を、末裔? という女性が語ったものをまとめたもの。という紹介をすると最も語弊がないだろうか。

前半は、ご一新(明治維新)で零落した士族の様子、後半は語り手・すずさん(こっちの方が書きやすいのでこう書かせてね)の人生……多くは結婚生活かな?

腹が立ったのは。
生活に困って娘を遊郭に売る・売られた娘は親孝行というのは江戸時代よく言われたことだけど、嫁に行った娘まで騙して売り飛ばしたというのが腹が立った。夫が「松平のじじいめ、切って棄ててやる」と叫ぶのも当たり前でしょう。大体この頃の女大学って「女は、親に従い、夫に従い、老いては子に従い」じゃないのかね? 父親が出しゃばって自分のためだけに嫁いだ娘を売り飛ばしてよいのかね? と謎に思ってましたよ読んだ当時から。これは、るろうに剣心の二次創作書く際にネタに使おうかと思いましたわわたし。妻を親に売り飛ばされた夫を助ける剣心と薫ちゃん(子供あり)、という感じさ。
このひとは8年ほど辛抱して、得意の機織を生かせる相手と再婚して、ふたりで大企業をつくり上げたそうですが。
他に、後妻の娘が3人と息子が2人(ひとりは上記の姉同様先妻の子)いて、娘3人は芸事ができるということで前述の姉より早くまとめて松本へ売られていて、三人三様の人生を送る、と。早々に身請けされたのあり、生糸商人の妾になったけど旦那が落ちぶれてシンガポールへ売られていったとか、借金を清算して結婚した夫が死んで再婚して先生になったとか。一番下の弟が船員になって、シンガポールで芸者と客として姉と再会したとか(嘘のような話だなあこれ)。


語り手のすずさんという人は、上記のきょうだいの長男にあたる人の三女だそうです。嫁いだ娘を売り飛ばしたけしからんジジイの孫娘にあたるわけです。明治24年9月生まれ。昭和47年没。
松平家はすずさんが生まれるころには完全に没落してて。彼女のお母さんは出て行っちゃって。内職をしながら大きくなったとか。で、25歳を過ぎた、当時としては遅い年齢で結婚をするんだけど、このダンナが初読当時のわしにはなに考えてるかようわからん人物だった。

けっこう現代的な人間だったのかただ単に神経質だったのか幼児性が抜け切らん人間だったのか、働かないでよっかかったら給料を家に入れたのか。ただ、酒も煙草もやらず、すき焼きも「他人と箸同士が触れ合うのが不潔に思えて」食べられなかったというから、かなり扱いにくい人物だったのだろう。戦前の「普通の人」の感覚では理解しがたい人間だったのではないだろうか。

すずさんと見合いする前によそへ養子にいったけど未入籍で不縁になって帰ってくるとかあったらしい。すずさんとも子供が生まれてもなかなか入籍しないのですずさんがお父さんに叱られたりとか書いてある。他に、小学校の先生だったんだけど、夏休みに一人で旅行に行ってしまうとか生活費を入れないとかよくわからん。
籍をなかなか入れなかったのは、ひょっとしてこのダンナ、自分の姓を変えたくなかったのかな? と今は想像している。ただ、後で自宅に引き取られてきたお父さんの伯母さんの頭をポカリとたたくというのは幼児性が抜けない感じがするので、このあたりに最初の養子先を離縁された理由が出てるかなと想像した。
その後すずさんは、ダンナの山川氏が昭和13年に長い入院の末に亡くなって、愛知県庁の軍事援護課嘱託婦人相談係というところに勤めるんだけど当時の法律がいかに男社会の論理でできてるかということを痛感しながら勤務していたとか。このあたりとその後の彼女の人生は読んで確かめてください。

大きな歴史の流れから見たら比較的最近のことのような、そうでもないような。でも、時間というものはきちんと連なって流れているんだな、というのを、母のご先祖さまの話を聞いた時のように感じながら再読しました(拾い読みだけど)。