某所の、年始の、新年最初の足あと主にリクエスト権あります、究極の思い付き企画の当選SSです。ときかなさんへ。
もっと練ればよかったですね。
去年、まだマイミクじゃなかった草加おっくん1976さんが、野球中継を見ていて、ビールを飲んでる修学旅行生を見つけまして。ついったーで言いました。
それで、私は、本田恵子の初期の漫画に「野球を見ながら大口開けてビールを飲んでいたら、その写真が雑誌に出てしまい停学を食らうというオープニングの作品があるということを話して、ついったーでプチ盛り上がったんですね。
そこからこのアイデアを使うことは決めていたのですが、もっと温めればもっと面白くなったかな?
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ワーッと、球場中から歓声があがった。
ここは天下の東京ドーム。
ジャイアンツの4番打者の登場である。
この日は、ホークスとジャイアンツの交流戦の2戦目であった。現在4回の裏。
ここで打ったらジャイアンツが逆転する。
「打つなー……三振しろ三信」
ネット裏には学生服の一団がいた。
修学旅行生である。
学生服を着崩した雅史は一番前の席で、戦況をじっと見つめた。
目の前をビールの売り子が横ぎった。
カーン!
いい音がした。
ジャイアンツ、逆転である。
「ヤケ酒じゃ! おねーさーん、ビール1杯ね!」
「……」
制服の者に売るのはまずい。
「お客様修学旅行ですよね、販売いたしかねますが」
「固いこと言いっこなし、旅の恥は掻き捨てともいうし?」
しばらく押し問答が続いたが、結局雅史はビールを買った。
「あ!」
「雅史、オーロラビジョン見て!」
「んあ?」
雅史は、隣に座っている彼女の曜子に言われ、口周りに泡をつけたままオーロラビジョンを見た。
口周りに泡をつけた間抜け面の自分が、真正面から映っている。
「まずいよ、これ多分全国放送だから、父兄が見ていて学校に通報とかするんじゃない?」
「だーいじょうぶだーじいょうぶ」
「まずいと思うけどなあ……」
「こら山崎、今何を買った!?」
先生が後方の席から雅史の姓を呼びつつ現れた。
「え、そうですか?」
翌日。
「まことに指導力不足で……」
前日の教師が頭を下げている。
雅史と教師は結局、試合途中でホテルへ引きあげてきた。
そのままお説教コースである。
翌日、校長から、教師の携帯に電話がかかってきた。
『うちの生徒と思しき修学旅行生がビールを買って飲んでいたのを見た、という父兄が3組もいたんだよ。そのうち一組は録画していたらしいから、固い証拠だぞ?」
「どうも福岡で試合を見ている時もビールをよく飲んでいるそうで……」
「とりあえず先に帰ってこい」
「はいっ……」
実は教師も野球が好きで、最後まで見られなかったのを悔しく思っている。
「おめーのせいでなあっ……」
修学旅行4日目のはずの昼間、視聴覚室で校長と教頭、教員と雅史は、該当試合の録画を見ていた。
同級生がアマチュア野球観戦を趣味にしていて、今年プロになったジャイアンツのゴールデンルーキーを見るために、家族に録画を頼んでいたものを貸してもらって3人で見ていた。
「4回の裏だったな?」
「ハイ……」
そして、紙コップからうんぐうんぐとビールを飲み、泡をつけてアップで映っているところで。校長は画像を止めた。
「これは山崎雅史、君で間違いないな?」
雅史は動かぬ証拠を突きつけられて、うなだれた。
「5日間の停学プラス、卒業までプロ野球生観戦禁止!」
雅史は神妙に処分を受け止めた。
FIN