久々のぬいぐるみは見た! の書き下ろしです。
うちはこのSS以下ですね。今年は歌さえも歌いませんでした。
ごめんね。可愛いぬいぐるみたち。
もっとページ数取ると思いきや、こんなもんでした。
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さすがに「お迎え」されて10年以上も経つと、ご主人のあたしたちに対する扱いも悪くなってくる。
あたしはいつもの白い猫のぬいぐるみ。
白無垢という、日本伝統の花嫁衣装を着ているの。
ダーリンも一緒に「お迎え」されて来てて、彼は紋付羽織袴だ。紋は、あたしたちが売りに出されていたハンバーガー・ショップのものである。
そんなダーリンとは、最近バラバラに管理されることが多く、顔を見られない日々が続いていた。
でも今日は、会えそうな気がする。
なぜなら。
ひな祭りだからっ!
ここ数年、ご主人は、毎年3月3日になると、あたしたちを前にして、
「♪あかりをつけましょ ぼんぼりに
おはなをあげましょ もものはな♪」
と歌ってた。曲名は「うれしいひなまつり」というらしい。
なんであたしたちなのか。
ひな祭りにはひな人形があるはずなのに、ここの家には子供がいないから無いのか。
ずっと謎だった。
そして、今年もご主人は、あたしたちを前にして「うれしいひなまつり」を歌った。
テレビからも「うれしいひなまつり」が聞こえてきた。
ひな祭りからしばらく経ったある日、ご主人は夫婦でテレビを見ていた。
『今年でご結婚なさって20年になられます……』
というアナウンサーの声がテレビから聞こえてきた。
テレビでは、ひな人形と同じような格好をした女性が、画面の左から右へと移動している。
「婚礼衣装ならひな人形代わりにいいと思ったのかー?」
「うん!」
ご主人は自信満々に答えた。
『それであたしたちを前に毎年ひな祭りの歌うたってたわけか』
『安易だよなあ』
『普通のひな人形勝ってくればいいけど、でもこんなのでもあたしたちが必要とされているならいいんじゃない?』
『そうかもな』