横浜市立大学の講義で知った、わたしのハンドルネームと同じタイトルの小説。
借りてきて、読んで、もうすぐ返却日なので記事を書きましょう。
昭和5年頃の作品。
華族辻家のお屋敷で家庭教師をしている純子(すみこ)は、帰省から帰京する汽車の中で魅惑的な姉弟に出会う。まゆみと章一。
彼らを連れていたお母さんが、汽車が東京駅に着いてみたら亡くなっていた! 途中ひょっとして、とこの展開を予想しましたが、汽車が着いてみたら亡くなっていたパターンの最初の頃の作品かもしれないね。
純子は自分が世話をすると決めて、勤めるお屋敷や警察と掛け合って姉弟を連れてくる。これが新聞に載ってしまう。
その新聞を読んだのは、辻家の長女綾子の女学校の同級生の母親。この母親が成り上がり者なのか、いやらしいんだ。で、辻家の女中頭に、主家の情報を流させて、自分の娘を辻家の若い当主に嫁がせるのに有利に運べるように企む。
まゆみは綾子と同じクラスに編入する。
純子とまゆみの百合物語を最初連想したけど、そうはならないが、ミステリ的な要素もあって、面白い。
だんだん面白くなっていき、頭が本の世界に浸かる状態になり、読んでて楽しかったです。綾子の友達が、最初まゆみを馬鹿にしてたけど、ラスト近くでまゆみが家出したので悔い改めるし。母親は娘が扱いづらくなったと辻家の未亡人由紀子に愚痴をこぼすけど。
女中頭を未亡人が裁くまで描いて欲しかった。これだけが不満かな。
楽しい読書でした。花物語が、のちの話に同じ人が出てくるのかとかわからない上に、短編集なので、イマイチハマれないでいたんですよ。これで吉屋信子の面白さに目覚めました。で、短編で面白いと思ってもらうって大変なんだなと気づき、いつも「ぬいぐるみは見た!」を委託してくださるときかなさんが仰ってたことの意味がなんとなくわかった気がしました。
ここでなんですが、ときかなさん、日頃からぬいぐるみは見た! を愛してくれて、ありがとうございます。御礼申し上げます。