たまたま読んでたら、横浜市大の講座的にクリティカルヒットだった本でございます。
最初こそ幻想的で靄がかかってる感じなんですが、上巻の中盤あたりからクリアになって物語がはっきりしてきます。途中から登場人物が死ぬ話が多いのが疵ですがね。
最初の幻想的な作品群で印象深いのは紫禁城でロケーションされたものでしょうか。
美文調と呼ばれる読みづらい文と、現代のものにも近い砕けた文との落差は激しいです。
刺繍の師匠をしている伯母さんの仕事を取り次いであげる話あたりから面白くなってきます。
庭に来た鸚鵡を撃とうとする若様を叱って国許へ返される家老の娘。
小学生の女の子にお姉さまができたと思ったら自分以外は奥様と呼ぶからおかしいと思ったのちに離れ離れになってバザーで再会するとか
じつはこの父娘だったんじゃないかと思う理科の老先生と女性との話
同居の妹分が学資が続かなくて学校が続けられないピンチになった時に、親に言って学資を出してあげるのはやりすぎだと思ったり
勤めにうんざりしてた見習い看護婦が。小学校の同級生の怪我入院で頑張ってお世話したら大感謝されてチャンスを掴むけど、仕事に活路を見出すとか(これは、女学校に行かせてもらって、知識を身につけて仕事に戻って来て活かせばよかったかなと思った)
雪の中駆け込んで来たお金持ちの人妻と仲良くなる話はDV案件やなと
師範学校の女子学生が働いて弟にプレゼントを買ってあげるけど、タイミング悪くて病気で死んで渡せない話は可哀想すぎて読んでられなかった
家族のお家の車夫に妙に共感できると思ったら百人一首のシーンが出てくるとか
女学校の同じ学年の隣り合うクラスはなにかと張り合いながら今で言う文化祭? を迎えて……
ここで上巻終わり
新米教師と可愛くない生徒と可愛い生徒の三角関係から、教師にも生理的に嫌悪感を抱く生徒がいるのかなと思ったり。
だんだん1本あたりの長さが長くなる。
隣の人と、隣の人ができないことをフォローしようとしてカンニングの疑いをかけられ受験に失敗した娘が、遠足で隣の人と会うとか
新米教師と女学生が、教師が赴任地へ行く汽車に乗る際に印象の強い出来事があった後、恋愛関係になって将来一緒に留学することを約束するけど、生徒に結婚話が出るとか
このあたりから話が悲劇的になる。どんなにコメディな始まりでも
凸凹コンビで病気のクラスメイトの元へお見舞いに行ってた話
学校のスターが片想いするけど、相手は貧乏な生活のせいか頑なでうまく行かないうちに……と言う話
卒業に当たってクラス全員持ち回りでノートを執筆と言うことを始めたら、恋をカミングアウトするひとがいたり
両親を失った貧しい姉妹、姉の妹への尽くしようが見ていられない話
和文タイプライターの仕事をしていて先輩と仲良くなるけどセクハラパワハラに巻き込まれたり
コメディな始まりだけど、美少女な下級生を想う2人の上級生の姿を描いた話、これが一番好きかな
ハンカチ落とし、小さい頃やったけど、この頃は女学生がやったのね
女学校時代は友情深かったけど、心の距離ができてしまった友人同士
ふられたから勉強に力を注ぐけど寂しくてならない女の子
日本画の大家の同門同士友情を育んでいたけど片方が入選して亀裂が入る
可愛くないから、可愛い妹と差別されて育った少女が家に放火しようとした? のを教会で懺悔したらシスターに救われた話は今でいえば虐待案件だよな
大トリは旅芸人一座の物語
とまあ、一部紹介しましたが、なんと多様なこと!
読み進むにつれて多様さを感じ、驚きました。
終盤は関東大震災にも触れられてます
トータルで行けば面白かったです。意外性もいっぱいあって、楽しめました。後半に行くほど、恋愛色が濃くなり、悲劇的になって行きます。